運び屋

 私の一番の仕事は何だろう…と考えた時、それは「ピアノを運ぶ」ことかなぁと、思っています。
 「うたごえ喫茶ながのともしび」に通い始めた学生時代、「歌のお姉さん」として子ども向けの出演活動を始めた頃は、伴奏はもっぱら先輩店長のアコーディオンでした。電源もいらず、持ち運べて、何十人もの人たちを歌わせることのできる素晴らしい楽器です。
 当時お店では、店長の横で私もたどたどしくピアノ伴奏の修行中でした。
 
 店長が交代したあとも、各地から公演のお話をいただきました。アコーディオンを弾けない私…はてさてどうしよう…。
 当時、河合楽器から出始めた電子ピアノ、せまいアパートに置くために買っておいた楽器です。
 「よし!これを運ぼう!」と、あとさき考えずに決めました。……とはいうものの、電子ピアノは普通のピアノと構造が似ており、鍵盤はハンマーでたたく様式なので、「めちゃくちゃ重い!」のです。50キロはあったかなぁ。これを二人で運ぶのです。ここから「運び屋」としての人生が始まりました。(^^;
 50キロを、エレベーターのない古い役場の4階まで、運び上げたS村の公演とか、忘れられません。運びのお手伝いしてもらった共演者の方々…よくぞ、長年見捨てないでお付き合い頂きました。

 というわけで、ピアノの腕はともかく、「電子ピアノを運んだ回数」ではかなりいいセンいってるかな?と自負してます。「ピアノ運べなくなったら、引退かな?」と覚悟していましたが、楽器メーカーさんの進歩は目覚ましいもので、今では私一人でも運べる質のいい商品が生まれています。(^^) 
 運び運んで35年、今の楽器は6代目。さて、あと何年運べるかしら?
 ヤマハさん・カワイさん、更なる商品開発よろしくお願いします。

 

2023年08月16日